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福岡地方裁判所大牟田支部 昭和43年(ワ)48号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、被告が銀行業務を営む相互銀行であること及び橋本健治が被告銀行荒尾支店長であつたことはいずれも当事者間に争いなく、<証拠>によれば、原告は渡辺勝則に対し昭和三九年二月一〇日現在、別表貸付番号1、4及び6の貸金債権を有していたことが認められ、<証拠>を総合すれば、同月一〇日、原告と渡辺勝則との間で前記貸金の元利金を金二五〇万円と協定し、これを同人は原告に対し同年五月一五日までに支払うこととし、同日、橋本健治は荒尾支店長たる資格において、渡辺勝則が右期日までに右の金二五〇万円を支払わないときは被告銀行において同人に代り直ちに金一五〇万円の限度で原告に支払う旨、原告と連帯保証契約を締結した事実を認めることができる。このように橋本健治は被告銀行荒尾支店長たる資格において本件連帯保証契約を締結したのであるから、同人は支店の営業の主任たることを示すべき名称を附したる被告銀行の商業使用人であり、支配人と同一の権限を有するものとみなすべきもの(商法第四二条)で、本件連帯保証契約のごときは金融機関たる被告銀行荒尾支店の営業に関する行為と認められるから、これが締結につき同人は被告銀行を代理する権限を有するものとみられ、右契約は被告銀行につきその効力を生ずるものといわねばならない。<証拠>によれば、被告銀行は昭和三五年五月二五日付をもつて各支店長に対し、従前支店長名をもつてなしていた保証を以後代表者名に限る旨の通達をなしており、以後、被告銀行各支店においては右通達に従つた取扱いがなされていることが認められるが、これがため、橋本健治には被告銀行を代理して保証をなす権限がないということを原告において知つていたと認めるに足る証拠はない。なお、商法第四二条第二項にいう「悪意」には過失により善意であつた場合は含まれないと解するのが相当である。

二、抗弁(二)について。橋本支店長が本件連帯保証契約を締結したのは原告の渡辺勝則に対する貸金中別表貸付番号1及び6の貸金の譲渡担保として同人から原告に提供してあつたクリーニング機械を荒尾支店において自己の同人に対する債権で差押え競売に付し、よつて原告の譲渡担保権を失わせたことに端を発し、原告において橋本支店長に対し、右競売は原告の譲渡担保権を故意に侵害する執行であり、又、手続的にも不正ありとして抗議したからであることは当事者間に争いがない。

被告は、原告と橋本支店長との右交渉の際、原告が被告銀行本店に行つて抗議するとか、国会議員の応援を得て国会で問題にするとか同支店長を強迫したため、これにより畏怖した同支店長がやむなく本件契約締結の意思表示をしたものと主張する。

<証拠>を総合すれば、原告会社の取締役である国盛ヨシ子及び国盛順太郎は参議院議員又は弁護士を同道して荒尾支店に支店長橋本健治を訪ねたり前記の執行を担当した半田執行吏を訪ねたりして不当執行として異議申立てをするとか競売無効を申立てるとか述べて抗議し、橋本健治に対しては被告本店に出向いて責任を追究するとも述べた事実、右執行吏や譲渡担保設定者であつた渡辺勝則や右物件の競落人等も、ことを穏便に解決するよう橋本健治に申入れた事実、特に渡辺勝則は同人に対し原告側は被告銀行を国会においても追究する意向らしいとも伝えた事実がいずれも認められ、これら四囲の者の言動により橋本健治が困惑畏怖したことは推測できるけれども、<証拠>を総合すれば、昭和三八年九月頃、国盛ヨシ子は原告が融資している渡辺勝則が荒尾支店とも取引があることを知つたので同支店に支店長である橋本健治を訪ね、渡辺勝則経営のクリーニング店の機械は同人が既に原告に対し譲渡担保権を設定している物件であることを警告したこと、しかるに橋本健治は渡辺勝則に対し同月三〇日、同人の不動産や、同人が既に原告のため譲渡担保権を設定していた機械一五点のうち一一点を含む二五点の機械を担保に金六〇〇万円を融資し、右機械については同年一〇月二四日に極度額を金二〇〇万円とする根担保権設定金融取引契約公正証書を作成し、渡辺勝則と謀り右公正証書に基づき半田執行吏をして同月二九日夜分に前記機械を差押え翌三〇日早朝七時頃に競売をなさしめ、時価少くとも四五〇万円程度の右機械を酒匂猛に五〇万程度をもつて競落せしめ、渡辺勝則の妻をして同人からこれら機械を借用せしめることとしたこと、がいずれも認められるから、右認定の経過からすれば、原告側で橋本健治の措置に憤慨するのは当然で、その言動が強迫の故意に出たものとは認めがたい。たとえ原告側の言動が第三者の言動と相俟つて強迫行為と認められるとしても、右認定の経過からすれば、右行為には違法性がないと認めるのが相当である。よつて抗弁(二)も採用できない。(井野三郎)

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